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番外編 哀しきひと

森崎さんはもともと真沙哉さんの部下だった。本部の命令で鷲崎さんを監視するために鷲崎組に派遣された。鷲崎さんと九鬼がやけに仲が良く、遥さんを九鬼に献上し、九鬼総業に寝返るかもしれないと小耳に挟んだ先代の福井さんが鷲崎さんのもとに監視役として派遣した。居心地がいいみたいで結局本部には戻らず、鷲崎さんと盃を交わし、詳しいことまでは分からないけど、電卓を片手に事務方の仕事をしているみたいだった。 「私はお使いの他に直矢さんと遥さんとデートの約束があるんです。さっさと終わらせましょう」 森崎さんが黒い皮手袋を両手に嵌めた。 その瞬間、顔つきがガラリと変わった。 「弓削、鞠家、蜂谷。いいかお前ら、その命を捧げ未知と陽葵を守ってこそ真の男だ。青空、お前には天性の素質がある。秦のカバン持ちだけで満足してないでてっぺん目指せ」 声色までガラリと変わった。 素の森崎さんはおそらくこっちなの知れない。 「ナオ親子の警備は鷲崎組に任せろ。何かあればすぐに連絡を寄越せ」 耳にイヤホンを付けると小型のマイクを手袋の中にそっと隠した。 「あの、森崎さん……」 おっかなびっくり声を掛けた。 「ナオさんと晴くんと未来くんのこと宜しくお願いします」 何事も一に挨拶、ニにスマイル。 笑顔でぺこっと頭を下げた。 少し驚いたような表情を浮かべたのち、はい。分かりました。森崎さんが優しく微笑んでくれた。

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