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番外編 哀しきひと
陽葵を抱っこしエレベーターに乗り込もうとしたら電話が掛かってきた。
「オヤジからかも知れませんよ。姐さん、陽葵ちゃんを抱っこします」
「ありがとう蜂谷さん」
蜂谷さんが手で頭を支えながら陽葵を横向きに抱っこしてくれた。
赤ちゃんを抱っこするのが初めてみたいで、最初のころは見ているこっちがひやひやしていたけど、橘さんや柚原さんに手取り足取り教えてもらい、最近は笑顔で話し掛ける余裕も出てきた。オムツ交換もお世話も率先して手伝ってくれるからすごく助かる。太惺と心望と陽葵。誰かの泣き声が聞こえてくればどこにいてもすぐに飛んできてくれる。
「寝る子は育つとよく言いますが、これだけ騒々しいのに熟睡しているとは。さすがはオヤジの娘。肝っ玉が座っている」
エレベーターが止まり扉がすっと開いた。
頭の上から腕が伸びてきて、扉が閉まらないように手で押さえてくれた。
「ウーさん、シェシェ」
見上げるとニッコリと微笑んでくれた。
「ちょっと待った!」
「きゃー!」
森崎さんの声が飛んできて。
ナオさんの可愛らしい悲鳴が同時に聞こえてきて。何事かと振り返ると、森崎さんがナオさんをお姫様抱っこしてこっちへ向かってきた。若い衆が松葉杖を抱え、幼稚園の制服姿の晴くんと未来くんが「まって。まって」と言いながらそのあとを追い掛けてきた。
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