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番外編 哀しきひと
「良かった間に合った」
ナオさんはゆでたこみたく顔を真っ赤にし、森崎さんの腕の中でちいさくなっていた。
「森崎、ナオが恥ずかしがってるぞ」
「だって抱っこしたほうが早いだろう」
「それはそうだが、信孝に焼きもちを妬かれても知らないぞ」
「心配無用だ。俺は未知さん一途だ。そのことは信孝が一番よく知っている。ん?」
森崎さんが何かに気付いた。
「ひゃん‼」
ナオさんが甲高い声を出し森崎さんの首にしがみついた。
「森崎、そういうの何ていうか分かるか?セクハラっていうんだぞ」
「遥もだけど、ナオもちゃんと食うもの食ってんのか?揉み心地がいまいちだ」
「も、森崎さん‼」
ナオさんの顔がますます真っ赤になった。
「そのくらい元気があればすぐに良くなる。ナオ、あまり頑張りすぎるなよ。きみはきみだ。晴と未来にとってママはきみしかいないんだ。信孝にとって妻はきみしかいないんだ。誰もきみの代わりは出来ない。たまには未知さんとママ友会を開いたり、息抜きも必要だ。自分を大切にするんだ。いいな」
「森崎さん……」
ナオさんが驚いたように森崎さんの顔を見上げた。
ーたまにはいいこと言うな。でも、森崎ー
スマホから七海さんの声が聞こえてきたからビックリした。電話に出るのすっかり忘れていた。
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