1985 / 3256

番外編 哀しきひと

「良かった間に合った」 ナオさんはゆでたこみたく顔を真っ赤にし、森崎さんの腕の中でちいさくなっていた。 「森崎、ナオが恥ずかしがってるぞ」 「だって抱っこしたほうが早いだろう」 「それはそうだが、信孝に焼きもちを妬かれても知らないぞ」 「心配無用だ。俺は未知さん一途だ。そのことは信孝が一番よく知っている。ん?」 森崎さんが何かに気付いた。 「ひゃん‼」 ナオさんが甲高い声を出し森崎さんの首にしがみついた。 「森崎、そういうの何ていうか分かるか?セクハラっていうんだぞ」 「遥もだけど、ナオもちゃんと食うもの食ってんのか?揉み心地がいまいちだ」 「も、森崎さん‼」 ナオさんの顔がますます真っ赤になった。 「そのくらい元気があればすぐに良くなる。ナオ、あまり頑張りすぎるなよ。きみはきみだ。晴と未来にとってママはきみしかいないんだ。信孝にとって妻はきみしかいないんだ。誰もきみの代わりは出来ない。たまには未知さんとママ友会を開いたり、息抜きも必要だ。自分を大切にするんだ。いいな」 「森崎さん……」 ナオさんが驚いたように森崎さんの顔を見上げた。 ーたまにはいいこと言うな。でも、森崎ー スマホから七海さんの声が聞こえてきたからビックリした。電話に出るのすっかり忘れていた。

ともだちにシェアしよう!