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番外編 哀しきひと
「なにか気になることでも?」
「橘さんと紗智さんと那和さん、大丈夫かなって」
「ヤスがいますので大丈夫です」
「え?ヤスさん?」
思わず大きな声を出してしまい、陽葵がびくっと体を震わせた。
「そう驚かなくても」
「だって移動スーパーの店長さんとして忙しいみたいでなかなか顔を出してくれないから。元気なのかなって、心配していたんです」
「心配しなくてもヤツは元気ですよ。命を捧げられる相手と生き甲斐を見付けたので。姐さんにまだ話してはいませんでしたが、実はヤスは、オヤジに命じられ、姐さんと同じ両性の子の弾よけをしています。ヤス曰く目に入れても痛くないくらい可愛くて仕方がないみたいです」
「ヤスさんその子が好きだとか?」
「へ?」
鞠家さんの足が止まった。
なにか、悪いことを聞いちゃったかな。
「その子は新婚ホヤホヤです。いま十八歳です。一回り年上の男性と出会って僅か一ヶ月でスピード結婚したんです」
「そうなんですか。すごい」
「そういう姐さんもオヤジとスピード結婚だったんじゃないですか。しかもデキ婚。年端もいかないいたいけな少年にまさか手を出すとは……な、ハチ」
「一太がいなければ俺も鞠家も、オヤジを逮捕しようと思った。未成年者だと知ってて手を出すのはれっきとした犯罪だからな」
蜂谷さんも鞠家さんも元刑事さん。彼を逮捕する気まんまんでいたということをこのとき初めて知った。
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