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番外編 哀しきひと

二階まで下りてきたとき陽葵が目を覚ましふぇ~ん、ふぇ~んと火が付いたように大きな声で泣き出した。気のせいかも知れないけどお尻がちょっと匂うような。 「時間がない。車のなかでオムツを交換したらいい」 「あ、でも、車を汚したら悪いし、それに匂いがこもるでしょう?」 「誰も気にしませんよ」 「そうです」 ウーさんが右手をすっと挙げた。 「俺が交換するそうです。マーは休んでいて。そう言ってる」 「ありがとうウーさん」 一度立ち止まり、にこっと微笑みながらウーさんを見上げると照れて真っ赤になっていた。そんなに恥ずかしがることないのにな。 無事に一階に着き、裏口へ急いで向かおうとしたら、ぶぶぶーっ、と陽葵がおならをした。自分のおならにびっくりしたのかぴたりと泣き止み、目を丸くししばらくの間固まっていた。 一瞬場が静まり返り、ピリピリしていた強面の男たちの視線が一斉に陽葵へと向けられた。 「いや~~めんごい」 あまりの可愛らしさにみんな顔が緩みっぱなしになった。 「がんばれー陽葵ちゃん」 「がんばれー」 プリプリ、プリ。 おならをしながら、ん゛ーーと、必死に踏ん張る陽葵をみんな笑顔で応援してくれた。 「ありがとうみんな」 「行ってらっしゃい、姐さん、陽葵ちゃん」 みんなに手を振られ、笑顔で行ってきますと答えて外へと向かった。

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