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番外編哀しきひと

自己中心的で子どもを蔑ろにするまゆこさん。奈梛ちゃんを始末すれば良かったと笑いながら答えたまゆこさん。 そんな彼女に、怒りに震える灼熱の小さな小さな塊が、窓を突き破り、頬を掠めたのはそのすぐ直後だった。 「くそっ」 追いつめられたまゆこさんがナイフを振りかざした。 「上澤先生を助けなきゃ」 「姐さん、大丈夫です」 「でも……」 切羽詰まった緊迫した状況にも関わらず、弓削さんと南先生はなぜか落ち着いていた。 「痺れるくらい素敵なハスキーボイスだな」 あれ?この声……。 上澤先生じゃない。 でも何で?一太と奏音くんと小学校に向かったはずなのに。こんなところに彼がいるわけないのに。 訳が分からず呆気に取られていたら、物陰から上澤先生がもうひとり姿を現したものだから、腰を抜かすくらい驚いた。 それはまゆこさんも同じだった。びっくりした目を見開き交互に凝視していた。

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