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番外編 ワンオウ

「上澤先生、裏から外に出れますよね?」 「あぁ」 白衣のポケットから鍵を取り出すと蜂谷さんに渡した。 「合鍵があるから、あとで返してもらえればいいよ」 「ありがとうございます。お借りします」 ちょうどその時、彼と弓削さんが渡辺さんと話しをしながら診察室から出てきた。 「あれ?」 一瞬、自分の目を疑った。 蜂谷さんも目を白黒させていた。 「どうした未知?」 「さっき目の前を通っていったよ」 「だから誰が?」 「誰がって渡辺さんが……」 「俺はずっと卯月さんたちと一緒だったぞ。あ、でも、さっきトイレに行ったか。一時間くらい前からどうも腹の調子が悪くてな。それが変なんだ。朝起きたときはなんでもなかったんだぞ。出勤してからお茶を淹れて一口だけ飲んだんだが、それを飲んでからどうも腹の調子が悪くてな」 「急須かポットのなかに誰かが何かを混入したんだよ」 彼の言葉に渡辺さんがはっとした。 「つまり久坂の次は俺ってことか」 「身内を疑いたくない気持ちは分かる。でも、デカも生身の人間だ」 弓削さんが険しい表情でまゆこさんの隣に立つ渡辺さんの後ろ姿を凝視していた。 「どうした弓削⁉」 肩を触れられぎくりとする弓削さん。 「……ワンオウ……」 「ワンオウ⁉」 弓削さんの動揺ぶりに彼が何かに気付いた。

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