2003 / 3282

番外編 ワンオウ

裏口から外に出ると壱さんが運転するワゴン車が静かに滑り込んできた。 彼に後部座席のドアを開けてもらい乗り込もうとしたら、 「み~~つ~~け~~た」 ここにいるはずがないあやみさんの声が後ろから聞こえてきたからギクッとした。空耳じであってほしいそう願いながらゆっくりと後ろを振り返ると、銃を手にしたあやみさんがふらふらしながら立っていた。目は焦点が合っていない。虚ろな目付きでにやにやと笑いながら、ガキを殺せ、ガキを殺せ、ガキを殺せ、何かに取りつかれたように何度も何度も呟いていた。 「ウー下ろせ。あやみは正気を失っている」 弓削さんがウーさんの腕のなかから飛び下りた。 「オヤジ、姐さん早く乗って。ウーもきみもだ」 素早くドアを閉めると、 「壱行け」 蜂谷さんとともにあやみさんの前に毅然とした態度で立ち塞がった。 進路方向に男が突如として現れ、銃を構えながら近付いてきた。隙のない身のこなし。よく見るとそのひとは渡辺さんと一緒にいた刑事さんだった。 「内通者はやはりお前だったのか」 渡辺さんが男の背後に立ち、銃を構えた。

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