2005 / 3281
番外編ワンオウ
卯月と秦とは二分の兄弟なんだ。二人とも心配していたぞ。怪我人の看病も大事だが、まずは自分の体を大事にしろ。お腹に太惺と心望がいたとき、身重の僕を気遣い、優しくしてくれた九条組の元組長の福田さん。あのとき掛けてもらった言葉は今でも覚えている。
九条組は敵対する宇賀神組に対抗するために鷲崎組の傘下に入った。相談役として組に残るよう鷲崎さんに説得された福田さん。老いぼれがしゃしゃり出る訳にはいかないと固辞し、ヤクザを辞め悠々自適のいなか暮らしをはじめた。
その福田さんが頭を丸め、パソコンのモニターの前で土下座し続けていた。
鷲崎さんがもういい。頭を上げてくれ。なんべん頼んでも福田さんは頭を上げようとはしなかった。
「福田さん止めろ‼」
懐から短刀を取り出すとお腹に突き刺そうとした。
鷲崎さんや幹部の男たちが福田さんに飛び掛かり、鷲崎さんが短刀を取り上げ、何とか自殺を阻止した。
ー遼成も兄貴も、福田さんが思うような、そんな器の小さい男じゃない。それはあなたがよく知っているはずだー
鷲崎さんの言葉に福田さんががっくりと肩を落とし項垂れた。
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