2007 / 3282

番外編 ワンオウ

「マー、たいくんとひまちゃんが目を覚ましたよ。ママを探してる」 「ありがとう」 紗智さんが呼びに来てくれた。 「あと、そうだ。ナオさん、病院から戻ってきたよ」 「そう良かった。あとでお見舞いに行かなきゃ」 「那和と一太くんと奏音くんが、晴くんと未来くんのお世話をするって張り切っていたよ」 ようやく眠りはじめた陽葵を起こさないようにそっと椅子から立ち上がると、ウーさんと弓削さんが一緒に立ち上がった。 「大丈夫だよ。上に移動するだけだから」 「鼠がどこに隠れているか分からないんだ。用心に越したことはない」 芫さんもまゆこさんも福田さんも姿をくらました。 芫は姐さんを殺しに必ず戻ってくる。そのときは俺が囮になる。 弓削さんの決意は固かった。 組事務所を出ると、ナオさんの家の前で青空さんが険しい表情で腕を組み仁王立ちしていた。近寄りがたい雰囲気にびくびくしながら、ありがとうって声を掛けようとしたら、 「秦さんにここに残りたいと頼んだ」 青空さんの方から声を掛けられたから驚いた。 「やり方が汚い。ナオ関係ない。未知も関係ない。赤ん坊もっと関係ない。好き勝手。許せない。だから、残る。残りたいと頼んだ」 落ち着いた、低い調子の声で口にすると、 「良かったあなたが無事で……」 ゆっくりと微笑んでくれた。

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