2009 / 3281

番外編 ワンオウ

【ぱぱたん ままたんにあまえちゅう じゃましちゃだめ】カレンダーの裏にそうでかでかと書かれた紙が橘さんたちの部屋の前に貼られていた。 「すごいね、遥香が書いたの⁉上手だね」 「さっちゃんににてつだってもらったんだ」 えっへん、遥香が手の甲で鼻をごしごしと拭くと、鼻が真っ黒になってしまった。 「クレヨンが手に付いてる。手を洗ってこないと」 「ハルちゃんおいで」 紗智さんが遥香と手を繋いで洗面所に連れて行ってくれた。 「戦闘態勢を解除しクールダウンするには橘に甘えるのが不可欠か。柚原らしいな」 くすっと弓削さんが笑った。 床の上に赤いクレヨンが落ちているのに気付くとそれを拾い、何やら書き始めた。 「弓削さん?」 首を傾げ見ていると【橘3日に一回くらいは柚原に優しくしてやれ。姐さんを頼む】几帳面な性格を物語るように丁寧な字でそう書かれてあった。それを見たとき、治療のために東京に戻らないといけないんだった。そのことを思い出し急に寂しさが込み上げてきた。 パパにまた焼きもちを妬かれるね。陽葵に心のなかで話し掛けた。

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