2010 / 3282
番外編福田さんの息子さん
「弓削さん?」
ソワソワして、じっとしていられないのか、座ったかと思えば立ち上がり、そしてまた座るを繰り返す弓削さんにそぉーと声を掛けた。
「いまだに腑に落ちないことがあって」
「もしかして福田さんの息子さんのことですか?」
「監視カメラの映像をもう一度確認するべきか悩んでいたんだ」
森崎さんたちが到着してから十分後にふらりと姿を現し、誰にも言われていないのに自分から身体検査と持ち物検査を申し出たみたいだった。
「福田さんの倅。名前は確か……朔久《さく》。オヤジと目を合わせようとしない。手の付けられないゴンタの朔久がやけに素直で、不自然な笑いをして、こちらの様子をちらちらと伺っていた。やましいことがあるからに違いない。朔久はなにかを隠している」
弓削さんがスマホを耳にあてた。
「ハチか?なんだヤスか。なんでお前がハチのスマホを持っているんだ。頼むからそう怒るな。謝るから」
コロコロと目まぐるしく変わる弓削さんの表情が面白くて。ププッと吹き出しそうになった。
「そうだ。監視カメラの映像をもう一回確認する。朔久の身体検査と持ち物検査に立ち合った若いのを至急組事務所に集めてくれ。森崎にもそこから動くなって言え」
電話を切ると、
「事務所に戻ります」
慌ただしく出掛けていった。でもすぐに戻ってきて、
「みんなの宝物である姐さんのファンクラブを立ち上げたふてぇ野郎は笹原だ。言い出しっぺは千里だかな」
「え?お兄ちゃんと地竜さんじゃないの?」
てっきりそうだと思っていたから驚いた。
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