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番外編 森崎さんの好きなひと

「バーバ見たい。紗智もマーもナオも見たいよね?」 那和さんに同意を求められ頷いた。 「なかなかの別嬪さんだぞ」 彼からスマホをぽんと渡された。四人で画面を覗き込んだ。 「ねぇバーバ、別嬪さんって普通女性だよね?どう見ても男なんだけど」 「なかなか可愛い面構えをしているだろう」 「バーバ、こういうタイプが好きなの?」 「浮気しようとしている。マーを泣かせる気まんまんでいるって橘さんに言い付けるよ」 「浮気する訳ねぇだろう。未知を泣かせる気はこれっぽっちもない」 「どうだか。昨夜散々マーのこと泣かせた癖に」 「あれは夫婦生活を営む上で必要不可欠なことで……那和、変なことを言わせるな」 彼の額から冷や汗がふきだした。 「未知さん大丈夫?」 「うん」 ナオさんが心配して声を掛けてくれた。本当は恥ずかしくて穴があったら入りたいくらいなんだけど。 整った眉や、きちんと後ろに撫で付けられた黒髪。姿勢のよい立ち姿。 意志が強そうな切れ長の目が男性を凛々しく見せていた。 板前さんなのかな?七分袖の白衣を着ていた。 「料亭……何て呼ぶんだろう?鼓の弓?」 「鼓弓《こきゅう》だ。東京の神楽坂に店を構える高級料亭だ」 「あれ?この人……」 写真に写る男性を見ていた紗智さんが何かに気づいた。

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