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番外編兄ちゃんHELP!
帽子を目深に被りマスクをつけた男性があたりをしきりに気にしながら抜き足差し足でそぉーと組事務所に入ってきた。あきらかに挙動不審なその男性はすぐにソファーの影に隠れた。
カタン、ドアが開いて派手な身なりの茶髪の男性が姿を現した。僕より四つくらい年上かも。
「ちわーっす。俺のヒサは?」
「なんだその挨拶は?そんな挨拶の仕方があるか」
鞠家さんが目を吊り上げ睨み付けた。
「これだからオッサンは」
ぶつぶつと小言を巻く男性の背後に黒い影が気配もなくぬっと現れた。
「オッサンは……なんだ?言いたいことがあるなら大きな声ではっきり言え。このストーカー男」
真顔で立っていたのは森崎さんだった。
「この緊急事態にのこのこ来やがって。鴨が葱を背負って来たって、上田や石山が泣いて喜ぶぞ」
「五月蝿いな。お前こそ俺のヒサを狙っている癖に」
激しく口論をはじめた。
隠れていた男性がそぉーと顔を出した。
「え?なに?」
目で何かを訴えていた。
「兄ちゃんヘルプだろう」
「じゃあ、彼が弓削さんの弟さんなの?」
「あぁ、そうだ。森崎と口論しているのは先々代の甥にあたる男で名前は確か誉《ほまれ》。先代は誉を養子にし、千里を追い出そうと目論んだがその前に亡くなった。面倒くさい男だ」
彼がチラッと横目で久弥さんを見ると、何度も頷いていた。
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