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番外編 遥琉さん、イチャイチャしている場合じゃないってば

「あ、そうだ。遥琉さん、イチャついている場合じゃないってば。緊急事態なんでしょう」 「腹が減っては戦ができぬってよく言うだろう」 「確かにそうだけど……」 (なんか意味が違うような……気のせいかな?) 朔久さんは何とか一命を取り留めるも意識不明の重体だ。 鷲崎組の若いのが寄ってたかって殴る蹴るの暴行を加えていたーー匿名のタレコミがあり、鷲崎さんら幹部が事情聴取を受けた。嫌疑はすぐに晴れたものの、分裂の火種は燻ったままだ。 「森崎、お前は動かず福島に留まれ。潜伏している誉を探せ」森崎さんは鷲崎さんの命令を受け、組事務所で寝起きしながら誉さんを必死で探している。 「あの野郎はどんだヤクだ」ヤクとはヤクネタの略で、トラブルメーカーという意味みたい。人様に迷惑を掛ける前に捕まえろ。彼の命を受け鞠家さんと蜂谷さんもそれこそ寝る暇を惜しんで捜索に当たっている。 「誉は上田と石山、両方と連絡を取り合っていたみたいだ。どっちに寝返っても、いいように利用されて用済みになったら始末されるのが目に見えている」 パジャマのなかに彼の手がするりと忍び入ってきた。 「は、は、遥琉さん!組事務所に行かなきゃだめなんじゃないの?」 上擦った狼狽の声を上げたけど、彼は躊躇せず指を進めてきた。 そしてそっと僕のを握りこんだ。 「妻がこんな状態なのに行けるわけないだろう。体の力を抜け。すぐに楽にしてやる」 愉しげにふっと微笑みながら囁かれた。

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