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番外編 遥琉さん、イチャイチャしている場合じゃないってば

「橘さん、ごめんなさい」 「未知さんはなにも悪くありませんよ。ゆっくり休んでくださいね」 布団を掛け直してくれた。 「ありがとうございます」 組事務所に向かった彼を見送り、寝室に戻ろうとしたら急に目眩がして、体が大きく左右にふらついた。 「姐さん!」 「マー」 弓削さんとウーさんの声と、バタバタという足音が聞こえたような気がしたけど、ぷっつりと意識が途切れてしまった。 陽葵の泣き声に気付き、目が覚めたのはそれから数時間後のことだった。 自分の身に何が起きたのかまったく覚えていなかった。 「疲れが出たんですよ。どっかの誰かさんが未知さんに無理ばかりさせて、寝せようとしないんですもの。貧血で倒れるのも当然といえば当然です」 「誉にありもないことを色々と言われたことも原因だろう。たく、うちの娘をイジメやがって。とんだヤクだよ」 「良かったな。たいしたことなくて。ウーからマーが倒れたって聞いたときはたまげで、心臓が止まりそうになったんだぞ」 「斉木先生、すみません」 「ウーさんのおっかさんは、俺のおかっさんでもある。だから気にすんな。居間で寝てっから何かあったら起こしてくんちょ」 ウーさんが寝ないで待っているからと、足取りも軽く斉木先生が鼻唄を歌いながら居間へと戻っていった。 「遥琉さん、まだ帰ってこないんだ」 いつも膝枕をしてくれる彼が隣にいない。それが寂しかった。

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