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番外編 ぽちゃぽちゃは禁句
「俺、全然気づかなかった。ごめんね、マー」
「謝らないで。那和さんはなにも悪くないよ」
「マーの言う通りだよ。朝ごはん食べてきたら?」
「ありがとう紗智」
台所に向かおうとした那和さんが何故か急に立ち止まった。
そっと下を見ると、奈梛ちゃんが那和さんのバスローブの裾を手でぎゅっと掴み、ちゅーちゅーと吸っていた。
何気に目が合うふたり。
奈梛ちゃんは怒られるとでも思ったのか、目蓋に涙を溜めて、うるうるしながら那和さんをじっと見つめた。
「ママと勘違いしてるのかな?ごめんね、ママじゃないんだ。それに、怒んないよ。お姉ちゃんっておいで奈梛ちゃん」
那和さんが奈梛ちゃんの脇に手を差し入れて、笑顔で話し掛けながら、よいしょっと抱き上げた。
「お姉ちゃん?お兄ちゃんの間違いじゃないのか?」
「柚原、お口チャック。怒るよ」
むすっとして睨み付けた。
「もしかしたらお風呂に入りたいのかも知れませんよ。体調が悪くて二日ほどお風呂に入れていないと鳥飼さんが話していました」
「なるほど。じゃあ、お姉ちゃんとお風呂に入ってこようか?朝のシャワー気持ちいいよ。斉木先生、奈梛ちゃんお風呂に入れても大丈夫?」
「熱がないから大丈夫だ。お尻がちいと赤いから優しく洗ってやってくれ。ごしごし厳禁だぞ。分かっだか?」
「了解。任せて」
大丈夫かと心配する柚原さんをよそに鼻唄を口ずさみながら意気揚々と浴室へと向かった。
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