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番外編 いっぱいあそんでおもいでつくろう

「睦さん大丈夫かな?」 「覚悟はしていたとはいえ、かなりショックだったと思いますよ」 「生きてさえいればいつかお母さんに会える。それを信じてずっと待っていたんだもの」 まさかこんな結末が待っているとは予想もしていなかった。 「颯人さんが献身的に支えていますからね。今はそっとしておいてあげましょう」 奈梛ちゃんが親指をしゃぶりながらじっとなにかを見ていた。視線の先にあったのは、壁の至るところに飾られた写真。陽葵と家族を撮影した写真がほとんどだけど、退院してここに帰ってきたとき菱沼組のみんなと記念に撮影した写真もある。 産まれたばかりの陽葵の右側に一太、左側に遥香が寝そべり、満面の笑顔でピースサインをしている、なんとも微笑ましい姿を撮影した写真を羨ましそうに眺めていた。 「なやちゃん、みんなでしゃしんとろう」 一太がそのことに気付き奈梛ちゃんに声をかけた。 奈梛ちゃんは目をパチパチさせながら、きょとんとして一太を見つめ返した。 「なやちゃんはひとりじゃないよ。ぼくやかなくんやハルちゃん、それにね、ここちゃんとたいくんがいる。ひまちゃんだっているよ。はれくんにみくくんも。だから、さみしくないよ。おもいではつくるもんだってパパがいってた。だから、いっぱいあそんで、たくさんおもいでをつくろう」 奈梛ちゃんがようやく笑顔を見せてくれた。 晴くんと未来くんも呼んで、写真撮影が賑やかにはじまった。

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