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番外編 ゆげさんはとってもやさしいんだよ、だからなかないで
人見知りしないと思った奈梛ちゃんだったけど、弓削さんの顔を見るなり下唇をこれでもかと伸ばし急に泣き出した。
「弓削さんの顔が怖いという訳じゃなく、岩谷兄弟と髪型や雰囲気が似ているからだと思います。泣くだけ泣いたら落ち着くと思いますよ。青空さんも奈梛ちゃんにギャン泣きされるのが分かっているから泣かれる前に避難したんです。心配しなくてもじきに慣れます」
「ままたんのいうとおりだよ。ゆげさんはねとってもやさしくて、おもしろいんだよ。だからなかないで」
「なやちゃんだいじょうぶだよ」
一太と遥香が奈梛ちゃんの前にしゃがみこむと、笑顔で話し掛け頭をぽんぽんと撫でた。
すると、ものの数分でぴたりと泣き止んだ。
「そろそろ時間か」
柚原さんが寂しそうにぽつりと呟いた。
捜査で急遽上京することになった渡辺さんが弓削さんに付き添ってくれることになった。マル暴のデカが一緒なら芫も迂闊には手出しは出来ないだろう。彼がそんなことを話していたことを思い出した。
「なんだべな、もう行くのか。寂しくなるべした」
「弾よけの仕事は俺にしか出来ません。二ヶ月後にはここに必ず戻ってきます。姐さんとのうねめ祭りデートをオヤジからゲットしたので死んでも破る訳にはいきません。斉木先生、俺の留守中、姐さんや子供たちのことをお願いします」
「任せておけ。にしてもおめさん、しゃでの心配はしねのか?」
しゃでとは弟のことだ。弓削さんは黙り込んでしまった。
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