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番外編 子どもたちの不思議な力

「姐さん、渡辺を待たせる訳にもいかないのでそろそろ行きます」 弓削さんが立ち上がろうとしたら、太惺と心望が弓削さんの膝の上に我先にと登りはじめた。弓削さん行かないで!と引き留めているようだった。 「たいくんもここちゃんもありがとう」 弓削さんの目には涙が浮かんでいた。 「ひまちゃん起きたよ」 オムツを取りに行っていた紗智さんが陽葵を抱っこして連れてきてくれた。 「ごめんね陽葵。ママ全然気付かなかったよ」 「泣かないで、自分の手をじーっと見ていたんだ。気付かないフリして、そぉーと素通りしようとしたら目が合っちゃって。さすがに、置いて来れなかった」 「ありがとう紗智さん」 「子どもには不思議な力があるってバーバが言ってた。だから、ひまちゃんも出掛ける 前に弓削さんに一回抱っこしてもらいたかったのかも」 「ひまちゃんまでありがとう。今抱っこしたら、間違いなくふたりに焼きもちを妬かれて臍を曲げられるので、出掛けるときに抱っこさせてください」 弓削さんの膝の上で立っちして、キャキャと歓声をあげながら頬っぺたをペタペタするふたり。ついさっきまで野菜せんべいを手掴みで食べていたことをすっかり忘れていた。 お陰で弓削さんの顔はあっという間にベタベタになってしまった。

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