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番外編 大事件勃発

鳥飼さんの携帯に何度掛けても留守電になっていた。 「この一大事に、朝っぱらからいちゃついているのかあのふたりは」 「奈梛ちゃんもいませんし、久し振りの夫婦水入らずです。九時前に一度、奈梛の具合はどうだと鳥飼さんから電話が掛かってきました。熱が下がり、食欲が出てきたのかご飯を残さず綺麗に食べました。お腹の調子もいいみたいですよ、そう答えると、電話の向こう側からフー待てと鳥飼さんの慌てたような声が聞こえてきて、ぶちっと切れてしまいました。柚原さん曰く、りんりんお腹空いた。腹一杯りんりんを食べる。フーさん、そんなことを言っていたみたいです」 「だとすると盛り上がっている真っ最中だな」 彼がスマホの画面を見つめたまま、深いため息をついた。 「仕方がない。森崎かヤスをりんりんのいえに向かわせるか」 森崎さんとすぐに連絡がついたみたいで、 「悪いがりんりんをH総合病院に大至急連れて行ってくれ。詳細は車のなかで説明してやれ」 そう頼んでいた。 「あやみ銃を捨てろ、妹をひとりにすんな。弓削と青空の想いは結局あやみには届かなかったな。生きてさえくれれば、妹とまた会うことが出来るのにな。藍子さん、若い命がまた消えようとしている。同じ母親でも、死んでもなお奏音を大事に想い続けたあんたとは雲泥の差だ」 仏壇の前に座ると線香をあげて手を合わせると、藍子さんの遺影に向かって静かに語り掛けた。

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