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守りたい命があるから、生き直すチャンスを与えてほしい

その頃度会さんの家では大変なことが起きていた。 「譲治、てめえー、俺を売って菱沼組に寝返る気か?」 「菱沼組の組長は千里眼だ。あんたが楮山と裏で繋がっていて甘い汁を吸っていたこと、とうの昔に気付いていたよ。妹をクスリ漬けにして弄んでおきながら、知らぬ存ぜぬか。妹は自分を責めて苦しんだ末に自殺を図り、ずっと植物状態だ。黙っていないで答えろ相楽!」 相楽さんは本部の古株の構成員だ。第一線から身を引き、旧知の仲だった度会さんを頼り福島に移住してきた。度会のよき話し相手であり将棋仲間でもある。 度会さんと一緒にいることが多いから、組事務所にはほとんど顔を出さない。だから接点がまったくない。僕もそうだけど若い衆の何人かは相楽さんの顔をまだ見たことがない。 「だからか昨夜若い連中におごるから付き合えって飲みに誘ったのか。組事務所の警備を手薄にするためと、警備態勢の詳細を知るため、ウォッカやテキーラなどわざと強い酒を呑ませたのか」 着流しを粋に着こなした度会さんが、腕を前で組み鋭い眼光で相楽さんを睨み付けた。 「相楽、前に言ったよな?可愛い娘たちや息子、孫たちを危ない目に遇わせたら承知しねぇって、たとえお前でも許さねぇって」

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