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番外編 守りたい命があるから、生き直すチャンスを与えて下さい

「奈梛、そんなにいっぱい一気に頬張ったら……ほら言わんこっちゃない。手がべたべたじゃないか」 鳥飼さんは自分のご飯は後回しにして奈梛ちゃんのお世話をしていた。 先に食べてていいよ。鳥飼さんに言われたフーさんは、橘さんに頼んでおにぎりを六つ作ってもらい、おかずをタッパーに詰めてもらい、玄関のドアの前で立ち話しをしている柚原さんと青空さんのところに持っていった。 言葉の壁はあるものの、柚原さんを真ん中にして床に胡座をかいて座る三人。同じ元殺し屋同士。何か通じるものがあるのかな?和やかに談笑していた。 服が汚れるし、お尻も冷たくなるからと橘さんが折り畳み式の椅子を持っていったけど、みんなさほど気にしていなかったみたい。 「遥琉さん、何があっても奈梛ちゃんをまゆこさんに渡しちゃ駄目だよ」 「どうした藪から棒に」 「だって奈梛ちゃんと一緒にいる鳥飼さんすごく幸せそうなんだもの。奈梛ちゃんも鳥飼さんを本当のママのように慕って甘えているでしょう?フーさんをこわがるどころかすぐに懐いたし。それにね遥琉さん、ここに来たときは全然笑わなかった奈梛ちゃんがだよ、今は自然に笑わうようになったでしょう。表情もすごく豊かになったでしょう。まゆこさんには申し訳ないけど、奈梛ちゃんこのまま鳥飼さんとフーさんと一緒にいたほうが幸せになれると思うんだ」 「たく、きみは相変わらず泣き虫なんだな」 彼に言われて泣いていることに初めて気付いた。 「だってしょうがないじゃん。陽葵を産んだらさらに涙もろくなっちゃたんだもの」 遥琉さんの意地悪。頬っぺを膨らませると、愉しそうに目を眇め、髪をぽんぽんと撫でられた。

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