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番外編 花さんの両親
数時間後。花さんの両親が菱沼組を訪ねてきた。年は六十歳過ぎ。二人とも喪服を着ていた。ビルをぐるりと取り囲む若い衆にびびりながらも、持参した花束をエントランス前に設けられた献花台に供えて、静かに手を合わせた。
「子どもがなかなか出来なくて、十年近く不妊治療を続けていたんです。虐待されて亡くなる子供のニュースを聞くたび、私たちみたいに子どもが出来ない夫婦もいるのに、神様はなんて不公平なんだって恨んだこともあります。お互い四十五歳を過ぎてもう子どもは諦めようと思っていたんですが……。私、結婚する前、ある病院に看護師として勤務していたんです。そこで研修医をしていた朴先生から突然電話が掛かってきて……どうしても赤ちゃんが欲しかった私たちは犯罪だと知りながらも、朴先生から花を買ったんです」
エレベーターがちょうどメンテナンス中で、菱沼金融で彼や鞠家さんや柚原さんらが花さんの両親から話しを聞いた。
「ごめんなさい。あまりいいイメージがなくて……もし誤解を招いたらすみません」
「俺らヤクザにいいイメージを持っている人はいない。騙されているかも知れない。疑ってかかって当然だ」
「こんなにも親身に話しを聞いてもらえるとは思っても見なかったので、会えて良かったです」
花さんの両親は彼に感謝の言葉を伝えた。
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