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番外編 桜舞う日、俺は天使に出会ったんだ
「ままたんは、たいくんとここちゃんをみてて」
「カレーはぼくたち三人で作るから」
台所に一太と奏音くん、そして割烹着姿の国井さんが立ち、早速夕ごはんの準備に取り掛かった。
彼と亜優さんはレタスを手でちぎってボールに入れる係り。慣れない手付きできゅうりを輪切りにしているのは……あれ?覃さんだ。さっきまで鞠家さんが切っていたのに。彼や亜優さんとひと言も発することなく黙々と作業を進めているから国井さんは覃さんがいることに全く気付いてない。
鞠家さんは眉間に皺を寄せ、気難しい表情で電話で話しをしていた。
「ん?」誰かに見られていることにふと気付いた覃さん。顔をそっと上げると太惺と心望が指を咥えてきゅうりをじっーと見つめていた。
「お兄ちゃんもお姉ちゃんもみんなきゅうりが好きだからな。悪いがきゅうりを半分に切ってそれを拍子切りしてふたりに渡してくれないか?」
「ちょうしぎり?なんぞや?」
「スティック状に切るだったら分かるか?」
「知らぬ」
「やっぱり通じないか」
覃さんには日本語がちょっと難しかったみたい。彼が手を伸ばし、亜優さんに通訳してもらいながらこうやるんだよと分かりやすく教えると、
「なるほどね」
切ったきゅうりをふたりにどーぞって差し出すと、にこっと微笑んで受け取ると、ぺこっと頭を下げた。さすが双子。動きも息もぴったりだ。
あまりの可愛らしい仕草に、覃さんの目尻が下がりっぱなしになり、メロメロになった。
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