2156 / 4015

番外編 桜舞う日、俺は天使に出会ったんだ

「あれ?覃の声が聞こえたような。気のせい……」 包丁を握ったまま国井さんが後ろを振り返った。 「じゃない。覃テメェー」 包丁を振りかざした。 「国井、子どもが真似をする。包丁を振り回すな。危ない」 彼に注意されはっとして我に返る国井さん。慌てて包丁をまな板の上に置いた。 「喧嘩をするなら外でやれ。家の中では絶対にやるなよ。大きな声や音が苦手な子がいる。びびらせて泣かせたら、たとえお前らでもただゃおかねぇぞ。分かったか」 ドスのきいた低い声に、なぜか覃さんの目がきらきらと輝きはじめた。中国語でなにかを呟いた。 こんなとき柚原さんがいてくれたら心強いのに。鞠家さんはまだ電話中だし。 「一旦切るな。あとで掛け直す。ボスがオヤジに惚れ込むのも頷ける。そう言ったんだよ。オヤジも姐さんに負けじと、危険な男たちにモテモテだとも」 「は?冗談だろう」 鞠家さんの通訳に彼の顔がひきつった。 「俺は未知一途だ。浮気する気はない。それに俺の尻は未知専用だ。未知以外に触らせるつもりはないからな」 慌ててお尻を手で隠した。それを聞いた覃さん。 「ボスと同じことを言ってる」 ぷぷっと笑い出した。

ともだちにシェアしよう!