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番外編 桜舞う日、俺は天使に出会ったんだ
「あれ?覃の声が聞こえたような。気のせい……」
包丁を握ったまま国井さんが後ろを振り返った。
「じゃない。覃テメェー」
包丁を振りかざした。
「国井、子どもが真似をする。包丁を振り回すな。危ない」
彼に注意されはっとして我に返る国井さん。慌てて包丁をまな板の上に置いた。
「喧嘩をするなら外でやれ。家の中では絶対にやるなよ。大きな声や音が苦手な子がいる。びびらせて泣かせたら、たとえお前らでもただゃおかねぇぞ。分かったか」
ドスのきいた低い声に、なぜか覃さんの目がきらきらと輝きはじめた。中国語でなにかを呟いた。
こんなとき柚原さんがいてくれたら心強いのに。鞠家さんはまだ電話中だし。
「一旦切るな。あとで掛け直す。ボスがオヤジに惚れ込むのも頷ける。そう言ったんだよ。オヤジも姐さんに負けじと、危険な男たちにモテモテだとも」
「は?冗談だろう」
鞠家さんの通訳に彼の顔がひきつった。
「俺は未知一途だ。浮気する気はない。それに俺の尻は未知専用だ。未知以外に触らせるつもりはないからな」
慌ててお尻を手で隠した。それを聞いた覃さん。
「ボスと同じことを言ってる」
ぷぷっと笑い出した。
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