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番外編 譲治さんの頼み事

火葬の前日、陽葵を寝かし付け子供たちを橘さんに頼み、ウーさんと蜂谷さんと青空さんに同行してもらいあやみさんに会いに度会さんの家を訪ねた。 「わずか十六年しか生きられなかったのが不憫でならないわ」 紫さんと並んで座り、顔に掛けてあった白い布をそっと取ると、眠っているとしか思えないくらい、あやみさんはとても穏やかな表情をしていた。 度会さんに新入りだと、譲治さんを紹介された。警戒しているのかキョロキョロと辺りをしきりに見ては、ビクビクしながら縮こまる男性。僕より年は上だけど同世代かも知れない。 「覃はいないって何度言っても信用してくれなくてな。譲治、姐さんに挨拶しろ」 「は、はい」ギクッとして座り直すと、 「譲治です。姐さん、世話になります」 畳に額を擦り付けるくらい深々と頭を下げられた。 「あ、あの、そこまでしなくても大丈夫ですから、顔をあげてください」 親子だから壱東さんによく似てる。 譲治さんはあることを僕に頼みたくて、会わせてくれと度会さんに頼み込んだみたいだった。

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