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番外編 譲治さんの頼み事
「見ても大丈夫ですか?」
「えぇ」
中を覗くと白い布に包まれた小さなものが入っていた。
(指輪かな?)
太惺も心望も手にしたものは何でも口に運ぶから目を離せない。この前も一太が机の上に置き忘れていた消ゴムを口に持っていったから慌てて取り上げたことがある。あやみさんも間違って飲み込んでしまったのかな?それとも証拠となる指輪を咄嗟に飲み込んだとか……。そんなことあり得ないか。
「遥琉さんに渡しておきます」
「お願いね、未知さん。そういえばめぐみちゃんたち元気にしてるかしら?そりゃあ、もう賑やかでしょうね」
チカちゃんたちと入れ違いにめぐみちゃんたちがナオさんのところに来た。根拠もないのに譲治さんを疑ってはいけない。かといって安易に信用出来ないから、しばらくの間信孝さんが三人の面倒をみることになった。
「紫さん、いつでも遊びに来てください」
「そうね、そうするわ」
紫さんとそんな会話をしていたら蜂谷さんが戻ってきた。
「紫さん、あやみの手が体の橫ではなく、胸の上にあるんですが移動させましたか?」
「いいえ、手には一切触れてはいないわよ」
「ですよね。一体誰が、何のために、わざわざ手の位置を移動させたんだろうか」
蜂谷さんの目付きが急に険しくなった。
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