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番外編 譲二さんの頼み事

「なんで紫さんを置いて先に逃げてきたんですか?不審者が本当にいたらどうするんですか?」 紫さんを助けなきゃ。戻ろうとしたら、ウーさんと青空さんに止められた。 「まさかこの年になって若い殿方にお姫様抱っこされる日が来るとはね。長生きはするものね。十歳は若返ったかも」 全身黒ずくめの若い男に横に抱っこされて紫さんが戻ってきた。 「彼ねすごくイケメンなのよ。力持ちだし、ドキドキし過ぎて心臓が持たないかも」 紫さんが子供のようにはしゃぐ一方、度会さんの眉間にどんどん皺が寄っていった。 「初めて見る顔だな。新入りか?蜂谷お前が連れてきたのか?」 「いや、俺じゃない」 「そうなると残るは……」 ちらっと覃さんを見た。 「ヤツはおば様のアイドルだ」 「もしかしてヤツが宋とかいうもう一人の変態か?」 「変態じゃない。乳首を()で、愛するごく普通の男だ」 「どこが普通なんだ」 価値観の違いに、さすがの度会さんもやれやれとため息をつくしかなかった。 男性は紫さんをゆっくりと下に下ろすと、軽く会釈し風のようにあっという間に姿を消した。

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