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番外編 譲治さんの頼み事
「髪がぱさぱさでボロボロだ。抜け毛も多い。国井みたくなる前にちゃんと言えよ。遠慮するなよ」
彼が上体を起こし手櫛で髪をすいてくれた。
「ありがとう遥琉さん」
「年のせいか、最近物忘れが酷くてな。すっかり忘れていたんだけど、洗い流さないトリートメントとか弱酸性のシャンプーとか、肌が敏感な未知でも使えそうなのをいろいろ買ってきたんだ。今度髪を洗ってやる。あと肩と腰も全身揉んでやる。ありがとうは俺の台詞だ。未知、今日も一日お疲れ様」
「僕はなにしてないよ。遥琉さんの方こそお疲れ様」
陽葵を抱っこしたまま彼と見つめ合うと自然と笑みが溢れて。おでことおでこをぴたっとくっつけた。
「下心見え見えなんですよ。その手はどうするつもりですか?」
橘さんが寝室に入ってきたからビックリした。
「ひまちゃんは下に寝せるとギャン泣きするんですよ。未知さん、遥琉が駄々を捏ねるとあとあと面倒なので、遥琉のお世話をお願いします。ひまちゃんのお世話は私に任せてください」
橘さんが陽葵を起こさないようにそっと静かに抱っこしてくれた。
「起きたら連れてきますね。喪主なんですから、くれぐれも寝過ごした、なんてことがないようにお願いしますね」
「言われなくても分かってるよ」
釘を刺され、ぎくっとしていた。
「喪主は鳥飼さんじゃないの?」
「夕方まではりんりんが喪主をつとめることになっていたんだが、具合が悪いみたいで、フーに支えてもらわないと立っていられないんだ。だから俺がりんりんの代わりに喪主をつとめることになったんだ。言うのが遅くなってごめんな」
「ううん、大丈夫」
首を横に振った。
「力の加減の仕方がいまいち分からないから、痛いときは言えよ」
「うん、ありがとう」
彼に肩と腰を揉んでもらった。
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