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番外編 譲治さんの頼み事

「起こしてごめんな。まだ寝てても大丈夫だぞ」 眠り眼を擦りながらスマホの画面をちらっと覗くと五時前だった。 橘さんは一度も陽葵を連れてこなかった。 「陽葵か?さっき見てきたら一太の隣でバンザイの格好で熟睡中だったぞ」 「朝までぐっすりねんねしてたんだ」 「少しぐすったくらいで、全然泣かなかったみたいだ」 「良かった」 そのとき奏音くんの泣き声が聞こえてきた。 奏音くんはいまだに夜泣きする。 暗い部屋で寝ることにもまだ慣れていない。おねしょも続いている。 朝起きると服も布団も冷たくて気持ち悪くて、泣きながら橘さんと柚原さんの姿を探す奏音くん。ふたりは決して怒らず笑顔で奏音くんに寄り添い、見守ってくれている。 「奏音、お風呂に行こうな。もう泣くな。失敗は誰にでもある。最初から出来るヤツはいない」 しゃくりあげながら泣く奏音くんをあやす柚原さんの声も聞こえてきた。 今日のスケジュールは、七時に出棺経をしてもらい八時に火葬場に向けて出発する。火葬は九時からだ。 僕と橘さんと柚原さんは子どもたちと留守番だ。

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