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番外編 譲治さんの頼み事
遥琉さんの喪服姿はじめて見たかも。思わず見惚れていたら彼と目が合ってしまった。
「遥琉さんがあまりにも格好良くて見惚れちゃった」
恥ずかしいというか照れくさいというか。
えへへと笑って誤魔化して枕を両手でぎゅっと抱き締めた。
「随分と嬉しいことを言ってくれるじゃねぇか」
「不謹慎だよね」
「そんなことないよ」
彼があぐらをかいて僕の前に腰を下ろした。
「火葬の前に一張羅の礼服が皺になっちゃうよ。橘さんに怒られるよ」
「その時はその時だ」
肩に腕がまわってきて。枕ごとそっと優しく抱き締めてくれた。
「冠婚葬祭全般のことを義理掛け、略して義理というんだ。関係者のみで直葬で執り行う予定が、俺が喪主になったことで、そうもいかなくなった。今日一日弔問客がひっきりなしに来ると思う。未知は家からなるべく動くな。気疲れして、りんりんみたく過労でぶっ倒れたら大変だから」
「うん、分かった。でも、姐さんとして弔問客に挨拶をしなくても大丈夫なの?失礼にあたらない?」
「紫さんが未知の代理を二つ返事で引き受けてくれた。紗智と那和も手伝ってくれるから心配するな」
おでこに、頬に、鼻先に。
そして最後に唇にちゅっと軽くキスをしてくれた。
「じゃあ行ってくる。留守番を頼むな」
「うん、分かった。遥琉さん行ってらっしゃい」
ぶんぶんと手を振り笑顔で彼を見送った。
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