2177 / 4015

番外編 譲治さんの頼み事

遥琉さんの喪服姿はじめて見たかも。思わず見惚れていたら彼と目が合ってしまった。 「遥琉さんがあまりにも格好良くて見惚れちゃった」 恥ずかしいというか照れくさいというか。 えへへと笑って誤魔化して枕を両手でぎゅっと抱き締めた。 「随分と嬉しいことを言ってくれるじゃねぇか」 「不謹慎だよね」 「そんなことないよ」 彼があぐらをかいて僕の前に腰を下ろした。 「火葬の前に一張羅の礼服が皺になっちゃうよ。橘さんに怒られるよ」 「その時はその時だ」 肩に腕がまわってきて。枕ごとそっと優しく抱き締めてくれた。 「冠婚葬祭全般のことを義理掛け、略して義理というんだ。関係者のみで直葬で執り行う予定が、俺が喪主になったことで、そうもいかなくなった。今日一日弔問客がひっきりなしに来ると思う。未知は家からなるべく動くな。気疲れして、りんりんみたく過労でぶっ倒れたら大変だから」 「うん、分かった。でも、姐さんとして弔問客に挨拶をしなくても大丈夫なの?失礼にあたらない?」 「紫さんが未知の代理を二つ返事で引き受けてくれた。紗智と那和も手伝ってくれるから心配するな」 おでこに、頬に、鼻先に。 そして最後に唇にちゅっと軽くキスをしてくれた。 「じゃあ行ってくる。留守番を頼むな」 「うん、分かった。遥琉さん行ってらっしゃい」 ぶんぶんと手を振り笑顔で彼を見送った。

ともだちにシェアしよう!