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番外編 譲治さんの頼み事

仏壇の前に戻ると白い影は消えていた。 「あやみおねえちゃん、ここにいたいんだって。みんなのかおを見ていれば一人でもちっともさみしくないって。たいくん、ここちゃん、のんのさんになむなむしようね」 一太が両手を合わせると、太惺と心望も見よう見まねで小さなお手手を合わせた。 「橘さん、分骨してここで供養することは出来るんですか?」 「えぇ。鳥飼さんと矢内さんとで分骨し供養する予定でしたから。鞠家さんに連絡してみます」 「お願いします」 橘さんがスマホを耳にあてた。 あやみさんはまだ家の中で指輪を探しているのかな?あちこちキョロキョロ見ていたら、柚原さんが息を切らして戻ってきた。 「あやみは?」 「姿を見ることが出来ないからどこにいるか分かりません」 「それもそうだな」 柚原さんが茶封筒を仏壇にそっと置いた。 「あやみ、探し物はこれか?俺らがいたんでは恥ずかしくて出てこれないよな?あとは姐さんに任せて、ほら、みんな移動するぞ」 「え?僕ですか?」 「奈梛のことを話してやったら安心すると思うんだ」 「それなら私も残ります」 子どもたちを柚原さんが隣の部屋に連れていってくれた。橘さんとふたり仏壇の前に座り、最近の奏音くんや、奈梛ちゃんの様子を藍子さんの遺影に話し掛けていたら、風もないのにぱさりと封筒が畳の上に落ちた。

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