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番外編 譲治さんの頼み事
白い布で包まれた小さな骨壺を抱え彼が戻ってきたのはお昼過ぎだった。
「お帰りなさい」
「ごめんな未知。度会さんの家でこれから精進落としがあるからすぐに出掛けないといけないんだ。りんりんが組事務所で横になっているから、あとで何か食べるものを持っていってくれないか?」
「うん分かった。奈梛ちゃんは?」
「疲れて一緒に寝てる。まぁ、無理もない。知らない大人たちに囲まれてかなり緊張していたからな。奈梛はあやみの遺影を不思議そうに首を傾げて眺めていた。いつか父親や姉たちが死んだことを奈梛に伝えなきゃならない日が来る。それが辛い。りんりんがそんなことを漏らしていた」
「良かれと思って隠してもいずれは奈梛ちゃんの耳に入る。自分だけ知らないということがどれだけ辛いか」
「まゆこは心の隙間に入り込むのが上手いからな。俺らで奈梛を何としてでも守らなきゃならない」
仏壇に小さな骨壺を置くと静かに手を合わせた。
「あのね遥琉さん、指輪のことなんだけど……」
「あやみに返したんだろう?橘から聞いた。伊澤は仕事が早いからな。あの指輪の持ち主が誰か、だいたい分かったみたいだ」
すっと立ち上がると、子どもたちの頭を撫でて、慌ただしく出掛けていった。
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