2186 / 4015

番外編 譲治さんの頼み事

橘さん特製のお弁当を持って組事務所を訪ねると、奈梛ちゃんが床にひっくり返って足をバタつかせながらギャンギャン大声で泣いていた。 鳥飼さんもフーさんもお手上げ状態だった。 「奈梛ちゃんおいで」 お弁当テーブルの上に置いて、よいしょと抱き上げた。 「暴れると落っこちるよ。泣かなくても大丈夫だから」 ぽんぽんとお尻を撫でた。 すると奈梛ちゃんに二の腕のあたりをガブッと噛まれた。 「イタッ」 思わず声をあげると、奈梛ちゃんがびくっとして固まった。 「奈梛!」 鳥飼さんの顔からさぁーと血の気が引いた。 「鳥飼さん奈梛ちゃんを怒らないであげて。自分が言いたいことを上手く言えないんだもの。泣くか、噛むかでしか表現出来ないんだもの。待てど暮らせどママもお姉ちゃんも迎えに来ない。やっとお姉ちゃんに会えたと思ったら、変わり果てた姿になっていたんだもの。どうしていいか分からないから、泣いて喚いて暴れるしかないよね」 怖がらせないように笑顔で頭を撫でると奈梛ちゃんがようやく口を離した。目からは大粒の涙が溢れていた。

ともだちにシェアしよう!