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番外編 譲治さんの頼み事
「奈梛に噛み付かれたと聞いたぞ。さすがは九鬼の血を引いているだけはある」
「笑いごとではありません」
橘さんが鷲崎さんを睨み付けた。
「まぁ、そう怒るな。そういえば兄貴から聞いたか?」
「何をですか?」
「まゆこの代理人を名乗る弁護士が奈梛の親権を取り戻すために水面下で動いているみたいだ。奈梛の後見人である弁護士を弁護士法違反で告訴するらしい」
「まゆこさんといい、その弁護士といい。自分勝手な人ばかりで困りますね。調停のときに一度も姿を見せなかった癖に。何を今更。私は逃げも隠れもしません。告訴するならすればいい」
「弁護士資格を剥奪されることになってもか?」
「えぇ、構いませんよ。専業主夫になればいいだけのことです。痛くも痒くもありません。遥琉専属の弁護士となり、かれこれ十二年。何事も引き際が肝心といいますし、遥琉も分かってくれると思いますよ」
あまりにもあっけらかんというかさばさばしている橘さん。
だからそれが余計に怖いんだよ、鷲崎さんが一人言をぼやいていた。
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