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番外編 じっち会
「橘、こうしたらどうだ?」
彼が静かに口を開いた。
「知り合いに阿部という弁護士がいる。裁判所の近くで法律事務所を開いている。阿部に協力を仰げ。阿部には民事事件に強い斎藤と、ネット犯罪に強い吉村という有能な弁護士がふたりいる。奈梛をまゆこに返してはならない。奈梛の帰る場所はまゆこのところじゃない。りんりんとフーのところだ。まゆこのバックにはシェドとひかりのみこと上田がいる。孤軍奮闘しても勝ち目はない」
「私に弁護士を続けろと?」
橘さんが彼をじろりと睨み付けた。
「当たり前だ」
「嫌だと言ったら?人使いの荒いあなたの専属弁護士はもう懲り懲りだと言ったら?」
「だったら、俺じゃなく、菱沼組じゃなく、未知専属の弁護士になれ。それなら文句はあるまい。危ない目に遭うことも、舎弟たちの尻拭いに駆り出されることもない。俺じゃなく未知の側にいてやってくれ。千里とふたりで未知を支えてやってくれ。な、橘……いや、優璃」
「私が精神的に参っているときにズルいですよ、その呼び方で呼ぶの」
橘さんが彼をじっと見つめた。
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