2200 / 4015
番外編 じっち会
「右手で徳利の真ん中辺りを持って、そう上手だ。左手を徳利の下に添えて注ぐんだ。お猪口の八分目を目安にな。それと、必ず相手がお猪口を持ったことを確認してから注ぐように。あと、熱燗でも火傷するからくれぐれも気を付けるように」
「うん、分かった」
お酌をしたことがない僕に彼が手取り足取り教えてくれた。
お猪口を持ったままお義父さんは文句も言わず、注ぎ終わるまで辛抱強く待っていてくれた。
「長生きはするもんだな。嫁に酌をしてもらえるなんて儂は果報者だ」
ニコニコと笑って上機嫌だった。
「オヤジ、卯月さん、鷲崎さん」
鞠家さんと蜂谷さんが血相を変えて居間に入入ってきた。
「どうした?」
「さっき渡辺から連絡が入って、県境にある荒海山の麓にある林道で乗り捨てられた県外ナンバーの車が発見された。所有者を調べたら九条の車だった。車内からは恩を仇で返すくらいなら死んだほうがましと書かれたメモと手配書が見付かった」
「手配書だと?誉のか?」
「いや違う」
鞠家さんと蜂谷さんの視線が僕に向けられた。
ともだちにシェアしよう!

