2206 / 3283
番外編 バイチー
「ダオレンの元飼い主に聞いたらなにか分かるんじゃないか?」
彼が地竜さんに電話を掛けた。
「あ、切りやがった」
そのあと三回かけ直したけど繋がらなかった。
「僕が掛けてみる」
地竜さんに電話を掛けるとワンコールで出てくれた。
「たく人を選びやがって。あとで覚えておけ」
ー基本、妻以外の電話には出ないことにしているんでね。緊急の場合は別として。未知、どうした?何かあったか?ー
「地竜さん、あの、僕の手配書が……」
ー覃から聞いた。イェンは足を洗ってカタギになったはずだ。風の便りで、もうじきカミさんとの間に待望の第一子が産まれると耳にした。本当か嘘かは分からないがー
地竜さんはいつもと変わらず穏やかな口調だった。
ーこれでも怒ってるよ。イェンにもだが、遥琉にもだ。きみを一人占めするなんて100年早いー
イェンさんは顔のない男。常にフードを目深く被り、野暮ったい黒縁メガネを掛け、マスクで口元を隠している。地竜さんも一度しか素顔を見たことがないみたいだった。
ともだちにシェアしよう!