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番外編 バイチー

「寝ないで待っててくれてありがとう」 彼が嬉しそうに布団に潜り込んできた。腕枕をしてもらい向かい合うとおでこにちゅっと軽くキスをしてくれた。 「ヤスが可愛がってる朝宮四季の義理の姉夫婦をしばらく匿うことになった。九月に第一子が産まれる予定だ」 「あの遥琉さん、全然話しが見えないんだけど……」 「義理の姉の名前は樋口結だ。十二年前に心と同じ目に遭っている。加害者は母違いの兄と、その遊び仲間だ。父親は上場企業のオークポリマーの社長で、身内の恥と事件そのものをなかったことにしたんだ。結局、母違いの兄も遊び仲間も逮捕されなかった。母違いの兄は父親から多額の逃走資金をもらってどろんだ。遊び仲間は別件で逮捕されたり、やくざの使いっぱしりをしているみたいだが」 「その人たちがなんでまた結さんを狙うの?」 「母違いの兄は名前を変えて別人として生きてる。青年実業家として成功し、裕福な生活をしている。おおかた結をエサにして大金を巻き上げるつもりだろう」 「なんでまたこんなときに。タイミングが悪すぎるよ」 「未知の言う通りだ。念のため結と、結の旦那の櫂の経歴を調べたが、特に怪しいところは見付からなかった。気になるところは何点かあったがな」 「遥琉さんが決めたことなら僕は反対しないよ。お腹の赤ちゃんが無事に産まれてくるまで、結さんを守ってあげて。九月に産まれるってことは七か月くらいだよね。悪阻とかはもう大丈夫なのかな?赤ちゃんが産まれるまで悪阻がひどくてしんどい思いをしている妊婦さんもいるから」 「根岸と伊澤が付いているから大丈夫だ。心配ない。結は、二人の関係を知っても驚かなかった。若い衆を見てもびびることなく動じなかった」 彼がぷぷっと思い出し笑いを浮かべた。

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