2210 / 3282

番外編 バイチー

「そういえば親父から何か連絡はあったか?」 「ううん」首を横に振った。 「連絡がないということは無事に着いたということか」 「お祖父ちゃんもお義父さんも弾よけがなくても自分の身は自分で守れるっていつも言ってるからきっと大丈夫だよ」 「そうだな」 夕方まで子どもたちとめいっぱい遊んでくれたお義父さん。 東京行きの新幹線に乗るためお祖父ちゃんと一緒に駅に向かったはずなのに、その新幹線には乗らず、なぜか福島方面の東北本線に乗ったお祖父ちゃんとお義父さん。向かった先は岳温泉。惣一郎さんと和江さんのところだった。 「親父、この際だから現役を引退して惣一郎さんのところでのんびり余生を送りたいって急に言い出したみたいだ。裕貴や心が戸惑っていた。親父としては二人に迷惑を掛けたくないんだと思うよ。組長は裕貴だ。いつまでも年寄りがでしゃばっていたんでは、裕貴も若い幹部連中もやりづらいだろうと、親父なりに気を遣ったつもりなんだが、まさに親の心子知らずだな。なかなか難しいな」 彼がため息まじりに微かに笑った。

ともだちにシェアしよう!