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番外編 彼と和真さん

客人は結さんの弟さん。朝宮和真さんだった。 彼曰く、上品で精悍さと知的を兼ね揃えたまさに王子様を絵に描いたような男性みたい。 「姉から子どもが生まれるまで菱沼組の世話になると連絡をもらって、心配でいてもたってもいられなくて昨日近くまで来たんです。でもビルの前に組員さんが大勢いて怖くて近寄れなかったです。早朝だったら人も少ないと思ったんですが……」 「まさか和真さんにいっきゃうとは思わなかったから驚いた。そうびくびくするな。別に取って食ったりしない」 ヤスさんが座るように促した。 「ヤスから、きみの妻も、俺の妻と同じ両性だと聞いて、勝手に親近感を持っていたんだ。四季に子どもが産まれればいいママ友、パパ友になれるんじゃないかなってな」 緊張しそわそわと手を動かしたりと、動作がぎこちない和真さん。 その緊張を解そうと、彼はなるべく笑顔で接した。 「顔が怖いのは元々だ。こればかりは慣れてもらうしかない」 「菱沼組の組長さんは人格者で弱い者の味方だと聞いてます」 「和真さんよ、卯月でいいよ。そう呼んでくれ」 「はい。では、あの卯月さん、私の方が年下なので呼び捨てでお願いします」 「おぅ、そうか。分かった」 話しているうちに共通点が多いことに気付いたみたいで、初対面にも関わらず彼と和真さんは意気投合した。

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