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番外編 彼と和真さん
「姐さん、朝ごはん余分にありますか?」
「ヤスさんお久し振りです。前に会ったのは確か……二十日くらい前でしたよね?ヤスさんが体調を崩していないか、力仕事だから怪我をしてないか、空を見るたびヤスさん元気かなってずっと心配で。遥琉さんには連絡がないってことは元気でやっているってことだ。心配しなくてもいいって言われたんだけど、でもやっぱり心配で……え?ちょっとヤスさん」
急にヤスさんが泣き出したから驚いた。
「そのくらいで普通は泣きませんよ」
「これは嬉し涙だ。笑いたければ笑え。姐さんがそこまで俺のことを心配してくれていたなんて、ヤスは果報者です」
橘さんに呆れられながらもしばらくの間ヤスさんは泣いていた。そしたら、飯はどうなったって彼から催促の電話が掛かってきた。
「一太くんたちがお弁当だと勘違いして、多めにご飯を炊いておいて良かったです」
橘さんと手分けして大急ぎでお握りを作った。子どもたちのお世話で手が離せない柚原さんの代わりに紗智さんが手際よくタッパーにおかずを詰めてくれた。
お弁当を紙袋に入れ、ヤスさんと一緒に組事務所に向かうと、ドアに寄り掛かりスマホを弄る男性の姿が目に飛び込んできた。
「ヤスさん、あの人は?」
「一人でここに乗り込み勇気がなかったんだろう。知り合いに付き添ってもらったみたいだ」
年は三十歳くらいかな。黒いズボンに萌葱色の作業着を着ていた。胸には須釜製作所と刺繍がされてあった。
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