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番外編 彼と和真さん

おはようございます。深呼吸をしてから男性に笑顔で声を掛けた。 「初めまして、卯月遥琉の妻です」 「え?」 男性が驚いたように目をぱちぱちさせた。 「俺らの姐さんを見た目で判断するんじゃねぇぞ」 ヤスさんに凄まれ、 「も、申し訳ありませんでした。須釜製作所、生産管理課の……あれ、名刺、どこいった」 男性が作業着のポケットやズボンの後ろポケットのなかをごそごそと探しはじめた。 「なんだここにあったのか。すみません私、こういう者です」 名刺をすっと差し出した。 「逆だ」 「逆?」 「だから向きが逆だ」 ヤスさんに言われようやく間違いに気付いた男性。慌てて名刺の向きを変えた。渡された名刺には【須釜製作所 生産管理課 課長 若林】と書かれてあった。 「若林と申します。副社長のもとで誠心誠意働いています。宜しくお願いです。じゃない、宜しくお願いします」 そんなにガチガチに緊張しなくてもいいのに。面白い人。ぷぷっと笑いが零れた。ヤスさんもどう対応していいか分からず戸惑っていた。 「若林さんも中に入ってご飯を食べてください」 「朝は食べない派なんです。それに……」 ぞっと身を震わせた。 「みんな怖くないですよ」 「本当にそうですか?」 「姐さんが嘘をつく訳ないだろう」 ヤスさんが若林さんの手首を握ると、なかば 強引に彼のもとに連れていった。

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