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番外編 彼と和真さん

「実はここに来た理由はもうひとつあるんです」 「遠慮することはない。言ってみろ」 「はい。私の同級生に吉村と斎藤という弁護士がいるんですが、今度、菱沼ビルディングの顧問弁護士の橘に会うことになった、どの法律事務所にも属さず一匹狼で弁護士をしているらしい。滅多に人前には出ないから、謎に包まれている。本当に実在するのか会って確認して来て欲しいと頼まれまして」 「なるほどな。橘は元々うちの組の顧問弁護士だったが、辞めて、未知の専属弁護士と菱沼ビルディングの顧問弁護士になったんだ。橘は未知に手伝い、子育てに奮闘してくれている。だから、滅多に人前に出ないんだ」 彼の説明に和真さんがきょとんとしていた。 「ちょっと難しかったな」 「いえそんなことないです」 和真さんが慌てて首を横に振った。 「遥琉さん、この写真は?」 テーブルの上にプリントアウトされた写真が山積みにされてあった。 「和真はつい数日前までオークポリマーという樹脂加工の業界最大手の会社でCOEをしていたんだ。全国にある営業所の社員、パート、契約社員合わせると1000人規模の大きな会社だ。中国にも工場がある。顔のない男が潜り込んでいてもなんら不思議じゃないだろう?」 「私でお役に立てることなら喜んで協力します。須釜製作所の副社長に就任したばかりで、私より若林のほうが内情に詳しいです」 和真さんが若林さんのほうをちらっと見た。

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