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番外編 彼と和真さん

若林さんはエレベーターの前で扉が開くのを和真さんと待っていた。 やがて扉が開いて、鳥飼さんとフーさん親子が仲良く連れ立って姿を見せた。フーさんが奈梛ちゃんを片手で軽々と抱っこし、もう片方の手は鳥飼さんの手をしっかりと握り締めていた。それを見た若林さんが息を飲んで立ち止まった。 「若林?どうした?」 異変に気付いた和真さんが声を掛けるも、若林さんは上の空で、組事務所に入っていく鳥飼さんとフーさん親子をじっと見つめていた。 「あれ?副社長は?」 数分後。はっとし我に返ったときは置いてきぼりにされていた。というか、エレベーターが開いて彼と和真さんと若い衆たちが先に乗り込んで、若林さんが乗るのを待っていたんだけど、若い衆の誰かが間違って扉を閉めるボタンを押してしまった。 「若林さんが乗るのを待っていたんですよ」 「え?そうなの?全然分からなかった」 「間違っていたらごめんなさい。若林さんはもしかして……」 「やっぱり分かるよね。バレバレだよね。心の声がただ漏れだよね。男運がなくて、付き合っても長続きしないんだ。だからさっきの人たちが羨ましくて」 そこで言葉を止めると哀しげに苦笑した。

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