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番外編 彼と和真さん

「若林さんのその悩み、一度橘さんに相談してみたらどうですか?」 「橘って、さっき話していた弁護士だよね?どうしたの?そんなに驚いて」 「いえ、別に」 慌てて首を横に振った。 「あれじゃあ誰も聞いてないと思うよね。ごめんね。初対面にも関わらず、あんなに副社長の話しを親身になって聞いてくれる人はじめてだからさぁ、びっくりしちゃって。市民を守るべき警察は四季さんをはじめから犯人扱いして、なにかあればすぐに疑ってかかる。だから警察は信用出来ない。副社長たちは誰にも頼らず自分たちでずっと四季さんを守ってきたんだ。四季さんは副社長の奥さんね。これでようやく副社長たちの苦労が報われる。本音を言うと、副社長はヤスさんという男に騙されているんじゃないか、ずっと疑っていた。ヤクザという先入観だけで偏見の目で見ていた自分が恥ずかしい。ヤスさんも卯月さんもいい人で良かった。安心しました。なんで俺、泣いているんだろう」 若林さんが鼻を啜りながら、エレベーターのボタンを押した。 「もし良かったらどうぞ」 クマ柄のハンカチを差し出した。 「可愛いですね。お子さんのですか?」 「はい。返さなくてもいいですよ」 「そういう訳にはいきません。洗濯してお返しします」 若林さんは軽く頭を下げてからエレベーターに乗り込んでいった。

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