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番外編 彼と和真さん

「まさか姐さんが出迎えてくれるなんて。嬉しいです。な、ハチ」 若林さんと入れ違いに姿を現したのは青空さんと蜂谷さんだった。 「まずはこの手を退かせ」 「減るものじゃないだろう」 仲良く肩を組む二人。でも蜂谷さんはかなり迷惑そうだった。 「姐さん、さっきの二人は?オヤジの知り合いですか?」 「ヤスさんの知り合いみたいです」 「ヤスの知り合い?」 蜂谷さんが鋭い目付きになり、何やら考え込んだ。 「決して怪しい人ではないです。須釜製作所の副社長の朝宮さんと、生産管理課、課長の若林さんです。名刺もあります」 若林さんと、あのあと朝宮さんからもらった名刺を蜂谷さんに見せた。 「これ預かってもいいですか?」 名刺をしばらくの間見つめたのち、蜂谷さんが上着の内ポケットからさりげなく取り出したのはジッパー付きのビニール袋だった。常に持ち歩いていることに驚いた。 「ここに入れてもらってもいいですか?」 言われた通りにすると、ジッパーをさっと引いてすっと内ポケットにしまった。 「なんだか匂うんですよね。誤解しないでくださいね。姐さんのことじゃありませんからね」 「ハチ、姐さんの匂いは、甘いミルクの匂いだ。たまにかぶりつきたくなるくらい旨そうな匂いだ」 「は?姐さんにかぶついたら怒るぞ」 蜂谷さんと青空さんは仲がいい。とてもいいコンビだ。

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