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番外編 彼とのデート
「姐さんを金のなる木呼ばわりする不逞の輩を通す訳にはいかない」
車から勢いよく若い女性が飛び出してきた。その手には何かが握られていた。
きーというかたい物が擦れる、耳障りな音が辺りに響く。
「たく、人様の大事な車を傷付けて。はた迷惑も甚だしい」
ワゴン車に残り壱東さんと留守番をしていた若い衆が助手席から下りると、後部座席を急いで開けてくれた。手を繋いだまま彼と一緒に乗り込んだ。
「卯月さんと蜂谷さんと青空さんが怒る気持ち、よく分かります。たまのデートくらいゆっくり過ごさせてやればいいのに」
「大陸の連中はみんな気が短い。気性も荒い。一分とて待てない」
「蜂谷さんと青空さんは大丈夫なんですか?丸腰ですよね?」
「元デカに、元殺し屋だ。二人は多くの死線を乗り越えてきた」
「譲治もいつか卯月さんのお役に立てる男になればいいんですが……」
「焦る必要はない。気長に待っていればいつか叶う」
壱東さんに車を出すように指示を出した。
やっぱり気になって腰を浮かせ後ろを振り向くと、蜂谷さんと青空さんと若い衆に女性が取り囲まれていた。赤い車は急にバックし、強引に車道に出るとそのまま猛スピードで走り去った。追う必要はない。渡辺に連絡をしろ。彼が電話で蜂谷さんに指示を出した。
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