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番外編 彼とデート

肩に彼の手が回ってきて。そのまま胸元に抱き寄せられた。お日さまみたいに心地よい温もりにほっと大きく息をついた。 「気の短いのがもう一人、うちに居候しているだろう?街中ではドンパチはするなと言っても聞きやしない。やりあうなら田んぼの真ん中でしろって言ったんだが、果たしてどこまで聞いているんだろうな」 「それってもしかして覃さんのこと?」 「あぁ、そうだ。覃の話しによると、長年の宿敵が教団を辞め、ひかりのみこの信者になったらしい。汗くさいかも知れないが、家に着くまで少し我慢な。きみに怖い思いをさせたくないんだ。それにドンパチするところを見せたくない」 包み込むようにそっと両手で抱き締めてくれた。 「壱、なるべく安全運転で頼む」 彼が壱東さんに声を掛けると、ゆっくりと車が走り出した。 カーラジオから流れてきたニュースが、捜索隊が荒海山の南稜小屋の近くで行方不明になっている男性たちのものと見られる所持品を発見したと報じていた。

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